娘のプレゼントを探していたら親が欲しくなった、映画モチーフのバービー8体

子どもとあそぶ

娘がおもちゃ売り場で人形コーナーをじっと見ていた。「誕生日のプレゼントに、バービーが欲しい」と突然言われるかもしれない。その日に備えて、バービーについて調べ始めた。だが、そこには、一度ハマると抜け出せなくなる、コレクターズアイテムとしての深淵が、口を開けていた。

バービーのコレクションシリーズの深い深い沼

バービーは、米国マテル社が販売する着せ替え人形だ。バービーと、ボーイフレンドのケン、3人の妹(スキッパー、ステイシー、チェルシー)が主要登場人物だが、設定上は双子の弟(トッドとトゥッティ)や末っ子の妹などもいるそうだ。

(出典『こちら葛飾区亀有公園前派出所』49巻「なんてったって愛ドールの巻」)

誕生から1970年代初頭までバービーは日本で作られていたとか、早い段階での多様性への展開とか、バービーの歴史は調べていくと結構面白い。

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現在は大きく分けて2つのラインがある。1つは、子供が遊ぶための着せ替えドールの基本ラインだ。ピンク色の箱に入って売られていることから、通称「ピンクボックス」と呼ばれる。価格もリーズナブルだ。

危険なのは、もう一方の、コレクション用のライン、通称「コレクティブル」だ。

バービーとケンが、ハイファッションに身を包んだ有名ブランドとのコラボモデルあり。歴史上の人物やセレブ、アイコン的な女性をモデルにしたシリーズあり。カルチャー作品をモチーフにしたモデルあり。さまざまなシリーズが存在する。大人向けの高価格帯シリーズで、限定生産のためその後にプレミアムで価格が高騰する。

コレクティブルは1972年の発売開始以来、膨大な数のモデルが販売されている。コレクション仕様だけあり、購買欲をそそられるものばかりだ。とりわけ、映画の登場人物や、ロックスターなどをモチーフにしたシリーズは、かなり心を動かされる。どれもこれもほしい。

バービーコレクションの深淵にハマりそうになる、「これは欲しい」と思った映画シリーズ8本を紹介したい。

1.ジェームズ・ボンドとボンドガール

ケンがジェームズ・ボンドに、バービーがボンドガールにそれぞれ扮した「007セット」。
ボンドは5代目のピアース・ブロスナンがモデルだ。ボンドガールは特定のモデルがいるわけではないが、いかにもボンドガールっぽいゴージャスなドレスだと思ったら、『ゴールデンアイ』や『トゥモロー・ネバー・ダイ』、最近の『カジノ・ロワイヤル』など007の5作品で衣装を担当したリンディ・ヘミングスが衣装をデザインしていた。

一方、2010年からは、具体的なボンドガールをモデルにしたバービーコレクションも発売されている。

第一弾として、『ドクターノオ』のハニー・ライダー、『ゴールドフィンガー』のプッシー・ガロア、 『ダイアナザーデイ』のジンクスが販売され、その後に、『死ぬのは奴らだ』のソリテアと、『オクトパシー』のオクトパシーも発売されている。

ファンにはたまらないが、それなりに価格も高くなっている。

もし今後、まだバービー化されていない『ロシアより愛をこめて』のタチアナ・ロマノヴァや、ダニエル・クレイグ・ボンドで最も人気のある『カジノロワイヤル』のヴェスパーが発売されたら、定価で買える時点ですぐ買ってしまいそうだ。

2.ヒッチコック・シリーズ

アルフレッド・ヒッチコック監督の映画をモチーフにしたバービー人形シリーズ。
中でも、『鳥』のティッピ・ヘドレンをモデルにしたバービーはすごい。映画で印象的だった若草色の美しいスーツの再現度が高いが、カラスに襲撃されているショッキングなシーンを再現している点が異色だ。

しかも、ティッピ・ヘドレンとヒッチコックの間には、ドールをめぐる因縁エピソードがあるだけに、異様さが際立つ。ヒッチコックのブロンド女優に対する強迫観念はすさまじいが、特に『鳥』以降のティッピ・ヘドレンへの異常な執着については、いくつも逸話が残っている。その1つが、彼女の娘(メラニー・グリフィス)の5歳の誕生日に、ママのティッピにそっくりなドールを作って、首に縄をかけた状態で棺桶型の木箱に入れてプレゼントした、という変態的エピソードだ。マテル社がこれを知らないはずはなく、よりによってティッピ・ヘドレンが襲われているドールを企画するとは…という恐ろしさがある。

ヒッチコック・シリーズでは、『裏窓』と『泥棒成金』のグレース・ケリーも発売されている。ヒッチコックが存命ならば、大喜びで買ってそうだ。

3.スター・ウォーズ

『スター・ウォーズ』シリーズは、バービーが単にスター・ウォーズのコスプレをしているのではなく、人気キャラクターをモチーフにしたファッションに身を包んでいるという、異色のコラボだ。

2019年発売の第一弾は、ダース・ベイダー、レイア、R2-D2の3体。続く2020年発売の第二弾では、レイ、C-3PO、ストームトルーパーがモチーフになった。

例えばこちらがダースベイダー。

ダース・ベイダーのコスプレかと思ったら、よく見るとマントの下は光沢のあるワンピースとブーツのコーディネートで、胸部プレートもセカンドバックにアレンジされている。

個人的には、このC3POが欲しい。

C-3POならではの細身のゴールドのドレス。ドロイドの特徴的な目と腹部は、サングラスとベルトで再現されている。アフロがここまで似合うとは!どう見てもC-3POだ。「メーカーに感謝!(Thank the maker!) 」

『スター・ウォーズ』のフィギュアといえば、ハズブロー製を筆頭に、さまざまなメーカーのバージョンが存在するので、もう買わなくてもいいかな、と思っていたが、この新しい角度に、欲しくなる。

4.Xファイル

こちらは、バービーとケンが、『Xファイル』のスカリーとモルダーに扮したセット。
1998年公開の映画版のコピー「FIGHT THE FUTURE」が書かれているので、映画公開記念と思われる。
2人が手にするFBIのIDなど、小道具も再現されている。
また、これに続いて2018年には、ドラマ放映25周年の記念バージョンも発売されており、こちらは顔が完全にモルダーとスカリーに寄せられている。「あなた疲れているのよ」とか言って遊びたい。

5.オズの魔法使い

1939年公開のミュージカル映画『オズの魔法使い』の公開75周年を記念して作られたシリーズ。名曲「虹の彼方に」をはじめ、映画で使われたメロディーがそれぞれ流れるギミックが付いているそうだ。

バービーが主人公ドロシーの姿をしているのは分かるが、それ以外のブリキの木こり、臆病なライオン、カカシを、全てケンが演じていることに、目を疑った。

ケンのカメレオン俳優ぶりには驚くばかりだ。

また、西の悪い魔女もバービーが扮装している。バービーは異色肌ギャルもいける。

6.スタートレック

異色肌ギャルというなら、スタートレックの異星人ヴィーナのバービーもある。

アメリカで大人気のスタートレックは、バービーで何度か商品化されている。ヴィーナは50周年記念モデルだ。

こちらは30周年記念モデルとして、ケンがカーク船長の衣装を、バービーがウフーラの衣装を着用したギフトセット(日本だとスタートレックはあまり人気がないせいか、わりと安い)

こちらは50周年記念のミスタースポック。

ものすごくよくできたミスタースポックのフィギュアになっていて、もうバービー観はない。バービーとはいったい何なのか、バービーの概念が揺らぐ。

7.ワンダーウーマン

マーベルとDCの主要なキャラクターも、バービーでコレクションドール化されている。中でも、ジャスティスリーグのワンダーウーマンは、これまで何度もバービーになっているようだ。女の子にとってのヒーローであり、長らく女性の地位向上の象徴的なキャラクターだったことも、バービーと相性が良いのだろう。

最近の『ジャスティスリーグ』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』版のワンダーウーマンのバービーは、ほぼガル・ガドットに寄った顔になっている。かっこいい。

こちらは『ワンダーウーマン1984』でスティーブ・トレバー演じるケンとのセット。白いドレスがゴージャスだ。

コミック版ワンダーウーマンのバービーも何度か販売されているようだ。

8.フランケンシュタイン

バービーとケンはコレクションによって、次々と姿を変える。この七変化の末に、ついにケンがフランケンシュタインになってしまったセットがこちらだ。

映画版『フランケンシュタイン』シリーズかとおもったら、そうではなく、1960年代の米ドラマ『マンスターズ(The Munsters)』をモデルとしたバービーだそうだ。元のドラマは、祖父が吸血鬼、父親がフランケンシュタイン、母親が魔女と、日本の『怪物くん』のような設定で、ロブ・ゾンビの監督により2022年に映画としてリメイクもされている。このバービーセットは、ドラマ版によせたものだ。

なお、60年前に『マンスターズ』と人気を二分したドラマが、後に映画にもなったあの『アダムスファミリー』である。そして、アダムスファミリーもバービー化されている。


他にも、『キングコング』や『スピードレーサー』、『フラッシュダンス』、『タイタニック』に『風と共に去りぬ』『パイレーツ・オブ・カリビアン』などなど、クラシックから最近の名作まで、映画をモチーフにしたバービーがいくつもあり、ヘップバーンやモンロー、ジェームズ・ディーンにエリザベス・テイラーなど映画スターのバービーもあるようだ。

調べれば、おそらくもっとあるはずだ。大変だ。ひとまず実物を見たい。できれば欲しい。集めたい。

娘へのプレゼントという趣旨からどんどん逸脱してきた。大人がひとたび足を踏み入れると、二度と引き返せなくなる、バービーの修羅の道が、すぐ目の前に伸びている。

(Willemnabuurs, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons)

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